東京地方裁判所 昭和40年(ワ)7721号 判決 1966年9月08日
原告 株式会社 東池
右代表者代表取締役 池田伝三
右訴訟代理人弁護士 井田邦弘
同 井田恵子
被告 織茂芳和
主文
被告は原告に対し金一五万五六〇円及びこれに対する昭和四〇年九月一七日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決は仮に執行することができる。
事実
≪省略≫
理由
被告が原告から原告主張の日時に別紙売掛品目録の食品を買い受けたことは、被告の明らかに争わないところであるから、自白したものとみなす。被告は代金支払方法の約定についての原告の主張を否認するが、原告が売買物件を買主たる被告に引渡した以上、特段の事情が認められない限り、原告は何時でも被告にその代金の支払を請求しうるものと解すべきであるから、原告の自認する代金支払期(売却の翌月一五日)を経過した本件においてその売買代金を請求できることは明らかである。
そこで、被告の抗弁について判断するに、原告訴訟代理人の陳述した従前の口頭弁論の結果によれば、被告は昭和四〇年一〇月二〇日午前一〇時の口頭弁論において、抗弁事実を立証するため≪証拠省略≫を提出し、原告訴訟代理人は右乙号各証の認否を次回に留保したことが明らかである。ところが被告はその後の本件口頭弁論には一度も出頭せず、且つ提出した右文書の写をいまだに提出していない。その間に裁判官は更迭し、原告代理人は乙号証の内容を記憶していないと言うのであって、結局乙号証の記載内容は不明であるから、これを証拠資料とするに由ないものと謂わねばならない。文書の提出により書証の申出をするに当っては、これと同時にその写を裁判所に提出することになっているが、この写の提出は書証の申出そのものの要件ではなく、写が提出されない場合でも書証の申出それ自体は有効に行なわれたことになるものと解すべきであるけれども、前記の如き事由により書証内容を明らかにしえない以上、判決に当ってはこれを無視せざるを得ず、これによって生ずる不利益は写の提出を怠った当事者が受けるほかはない。結局本件においては被告の抗弁は、これを認めるに足りる証拠がないので採用することができない。
而して原告が食品の製造販売を業とする会社であることは、被告の明らかに争わないところであるから、前記売買残代金一五万五六〇円及び本訴状送達の日の翌日たること記録上明らかな昭和四〇年九月一七日以降完済迄商法所定の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の本訴請求は正当であるから認容し、訴訟費用及び仮執行の宣言についてそれぞれ民事訴訟法第八九条、第一九六条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 室伏状一郎)